ほぼノーマルのハイラックスで総合4位!TEIN『4×4 DAMPER GRAVEL4』がAXCR初挑戦で快走

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赤土を巻き上げてコーナリングするハイラックスGRスポーツ。鎌田選手のコーナリングは豪快だ
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  • フロントサスペンション
  • リヤサスペンション
  • ラリー前のテスト後にチェックを受けるダンパー
  • テスト走行をするハイラックスGRスポーツ
  • サービストラックと競技車両のハイラックスGRスポーツ
  • 競技車両のハイラックスGRスポーツ ゼッケン装着前
  • 競技車両のハイラックスGRスポーツ ゼッケン装着前

スポーツサスペンションメーカーのテインが、アジアクロスカントリーラリー初参戦で総合4位完走を達成。事前テストから帯同した筆者が、その挑戦を追った。

◆テインの原点はラリー、初挑戦のアジアクロスカントリーラリーへ

サービストラックと競技車両のハイラックスGRスポーツ

皆さんはテインについてどのようなイメージを持っているだろう。20代、30代の方であれば、テインといえば車高を下げたり減衰力を調整したりできるサスペンションシステムのメーカーという印象が強いかもしれない。しかしテインの原点はそこではない。ラリーメカニックだった市野諮氏とドライバーの藤本吉郎氏が、自分たちの理想とするサスペンションシステムを作りたいという思いから設立した会社だ。つまりその原点はラリーにある。藤本氏は1995年のサファリラリーで日本人として初優勝を果たした名ドライバーとしても知られている。

テインは現在もラリーやダートトライアルをはじめとしたモータースポーツに積極的に取り組んでいるが、新たな挑戦としてラリーレイドへの参戦を計画。その舞台として選ばれたのがアジアクロスカントリーラリー(AXCR)だった。

競技車両のハイラックスGRスポーツ ゼッケン装着前

アジアクロスカントリーラリーは今回で31回目を迎えた大会。「クロスカントリー」の名にはオフロードなどのクロスカントリーロードがSS(スペシャルステージ)に設定されていることに加え、複数の国をまたいで競技を行うという意味も含まれている。ただ近年は社会情勢の変化などからタイ国内だけで競技を完結するケースも増えており、2026年大会もタイ国内のみのコース設定となった。スタートはタイ東部のパタヤ、ゴールは北部のピッサヌローク。6日間で総走行距離約2000km、6本のSSが用意された。

◆ほぼノーマルのハイラックスGRスポーツに足まわりだけで勝負

フロントサスペンション

テインのマシンはトヨタ・ハイラックスGRスポーツ。参加クラスは比較的広範囲な改造が許されるT1Dクラスだ。しかしテインのマシンでT1Dクラスの改造に該当するのはATクーラー程度。仮にATクーラーを取り外せば、無改造に近いT2Dクラスに該当する仕様だ。

エンジンはノーマルで、駆動系もLSDが組み込まれる程度。足まわりにはテインが開発中のコンペティション用ダンパー「4×4 DAMPER GRAVEL4」を採用し、スプリングは前後ともレートを変更している。タイヤはダンロップのグラントレックを履く。いってみれば「4×4 DAMPER GRAVEL4」という足まわりを武器に勝負を挑んだのである。

人的布陣はドライバーが鎌田卓麻選手、コ・ドライバーが柳川直之選手、総監督が藤本吉郎氏。鎌田選手はラリーやダートトライアルで活躍するトップドライバーだが、ラリーレイドは未経験。今回のアジアクロスカントリーラリーが初参戦となる。

リヤサスペンション

一方の柳川選手は、アジアクロスカントリーラリーにコ・ドライバーとして16回参戦している大ベテラン。ただしこれまで柳川選手がコ・ドライバーを務めてきたマシンはジムニーで、ハイラックスのようなハイスピードモデルでの参戦は初めてだ。

通訳さんを含めて総勢12名のチーム体制

しかも鎌田選手と柳川選手は今回の参戦にあたり、バンコクのスワンナプーム国際空港で「はじめまして。よろしくお願いします」と挨拶を交わしていた。つまり初対面でバディを組むのである。スタッフも日本人、中国人、タイ人による混成チームで総勢10名程度。メーカー系ワークスチームの10分の1以下という小規模な体制だ。

◆初めて乗った鎌田卓麻が高評価!開発中の4×4 DAMPER GRAVEL4

テスト走行をするハイラックスGRスポーツ

競技開始を前にタイ中部のロッブリーで行われたテストで、鎌田選手は初めてマシンをドライブした。

「すごく乗りやすい。このままで十分にいける。これは上を狙っていける」

かなり満足した様子で、細かなセッティングを詰めるというより問題が残っていないかを再確認するように走行し、およそ2時間でテストを終えた。

このマシンは以前アジアクロスカントリーラリーに参戦した車両をベースにしているため、基本的な部分の洗い出しはすでに済んでいる。そこにテインの「4×4 DAMPER GRAVEL4」を組み込んだ仕様だけに、車両チェックで確認する項目もそれほど多くなかったのだろう。それにしても初めて乗ったマシンをあっという間に乗りこなしてしまう鎌田選手の高いスキルには脱帽である。

ラリー前のテスト後にチェックを受けるダンパー

ここで「4×4 DAMPER GRAVEL4」について少し説明しておこう。世界的に販売が好調なトヨタ・ハイラックスなどのピックアップトラックや、かつてのクロカン4WDを思わせるヘビーデューティSUV向けに展開されるのがテインの「4×4シリーズ」だ。

市販モデルとして「4×4 DAMPER GRAVEL1」「4×4 DAMPER GRAVEL2」「4×4 DAMPER SPORT」「4×4 STREET ADVANCE Z4」の4種類が用意されている。「4×4 DAMPER GRAVEL4」はシリーズ最上級に位置するコンペティション専用モデルとして開発中のダンパーで、今回のアジアクロスカントリーラリー参戦では性能確認と開発も大きな目的のひとつだった。

「4×4 DAMPER GRAVEL4」は別タンク構造を採用した車高調整式のコンペティション用ダンパーで、大きく2つの新技術が盛り込まれている。

ひとつがC.H.B.S.と呼ばれる機構だ。C.H.B.S.は「Compact Hydraulic Bump Stopper」の略で、ダンパーがフルバンプ、つまりもっとも縮んだ状態になった際の底付きを防ぐ機構。ダンパー内部に油圧式のバンプストッパーを設け、ストロークの最終領域で作用させる。重量のある車両が大きなギャップを越える場面やジャンプ着地時などで大きな効果を発揮する。

もうひとつがTCV(Thermal Control Valve)だ。ダンパーの減衰力を決める大きな要素のひとつが、内部に封入されたオイルの粘度。オイルは温度が上昇すると粘度が下がる性質を持つ。これは物理的に避けられないため、TCVによってオイル温度の変化に伴う減衰力変化を抑え、長時間の激しい走行でも性能低下を最小限に抑える仕組みだ。

◆パタヤから競技スタート、SS1でいきなりトップゴール!

パタヤビーチの歓楽街で行われたセレモニアルスタート

8月8日に予備車検、9日に本車検を済ませ、今やアジアクロスカントリーラリーの名物となりつつあるパタヤビーチの歓楽街「ウォーキングストリート」でセレモニアルスタートを迎えた。本格的な競技開始は翌10日だ。

アジアクロスカントリーラリーではSSのスタート地点までリエゾンと呼ばれる一般公道区間を交通法規に従って移動し、SS区間でタイムを競う。その後再びリエゾンを走って当日の宿泊ホテルへ向かう。コース設定によっては競技区間の途中にリエゾンが介在する場合もある。

以前は予選的なスプリント競技を行って初日の出走順を決めていたが、現在はゼッケン順に2分間隔でスタートする方式だ。SSには林道のようにクルマ1台がやっと通れる道も多いため後方スタートは不利。先行車がスタックしていれば、自分のペースが速くても抜くことができない場合もある。

チームテインのゼッケンは120番。4輪競技車は100番台のゼッケンが与えられているため20番手のスタートとなる。

SS1スタート

8月10日、SS1が始まった。晴天の中、砂煙を上げてスタートした鎌田/柳川組のハイラックスGRスポーツは筆者の前を順調に駆け抜けていった。

ラリーはサーキットとは違い、限られた場所でしか走行シーンを見ることができない。どこで何が起きているのかもSSが終了してみなければ分からない。この日も午後にはスコールに見舞われたというが、筆者は取材中に一度も雨に遭遇しなかった。わずかな時間と場所の違いで天候がまるで異なるのである。

この時期のタイは雨期。各所に大きな水たまりがあり、行く手を阻む

初日に筆者がSS中のゼッケン120番を確認できたのは2回。いずれも順調に走っていた。そして迎えたSS1のゴール後、SNSに連絡が入った。

「トップでゴール!」

初出場のチーム、そしてラリーレイド初出場のドライバーが、いきなりトップタイムでSS1を走り切ったのだ。

筆者は帯同取材ということで「TEIN」のロゴ入りTシャツを着ていた。するとほかのチーム関係者から「テインさん、すごい」「テインさん、なんであんなに速いの?」と次々に声を掛けられた。日本の関係者だけではない。海外チームのスタッフも声を掛けてくる。初出場のチームとドライバーがいきなりトップに立ったことに、誰もが驚いていたのである。

◆パンクやキルスイッチのトラブルを越え総合4位でフィニッシュ

湖の横を疾走するハイラックスGRスポーツ

しかし残りの日程ではさまざまな出来事が待っていた。2日目のSS2ではパンクが発生するなどして単日19位となったものの総合4位。3日目のSS3では一気に追い上げ、単日2位、総合でも2位へ浮上した。

ジャングルの中を走るハイラックスGRスポーツ

4日目のSS4ではジャングルの中をハイペースで走行中、木の枝が車外のキルスイッチを叩いてオフにしてしまい、エンジンが停止するというトラブルに見舞われた。単日13位まで順位を落としたものの、それまでに築いたタイム差が生きて総合4位をキープした。

5日目のSS5では午前中にミスコースがあり大きく遅れたが、それでも単日4位。総合6位で最終日を迎える。

セレモニアルゴール

そして最終日のSS6で総合順位を2つ上げ、最終的にはクラス4位、総合4位でフィニッシュ。テインはアジアクロスカントリーラリー初挑戦を堂々の総合4位で終えた。

総合優勝はTeam MITSUBISHI RALLIARTの田口勝彦(日本)/保井隆宏(日本)組が駆る三菱トライトン。トライトンは2022年、2025年に続いて3度目の優勝となった。

◆鎌田卓麻「LEG1からこの走りができれば優勝するチャンスもある」

ドライバーの鎌田卓麻選手

ゴール後、鎌田選手に話を聞いた。

「タイに来る前はいろいろ聞かされていて、もっともっと厳しいラリーを予想していました。でも用意していただいたマシンがとても良かったことと、もちろんサスペンションも何のトラブルもなく走れたこともあって、ものすごく大変だったという思いをせずにラリーをフィニッシュできたというのが正直な印象です。とにかく与えられた道具やスタッフの皆さんが優れているんだなと感じました。ダンパーもノートラブルで無交換のまま走れていますし、テストとしても大成功だといえるでしょう」

「ラリーレイドは未経験だったので、最初は柳川さんの指示どおりに動いていたんです。でもボクが思うナビゲーションを柳川さんのやり方に加えていくと、どんどんスピードが上がっていく感覚がありました。このラリーにはレッキ(ラリー本番前の下見走行)もなければ、レッキで作るペースノートもありません。ボクらがラリーを始めたころは、そういうレッキのないラリーも多く、目で路面やコーナーの深さを読んで走ることが多かった。その昔の経験も生かせてきました。LEGを重ねるごとに状況が良くなってペースも上がりました」

「ラリー中にやり方や操作方法、走らせ方がどんどん分かってきたので、LEG1よりLEG6のほうが断然速く走れています。それをLEG1から発揮できれば、優勝するチャンスもあるんじゃないかなと思います」

◆柳川直之「鎌田選手は本当にマシンを丁寧に扱っていた」

コ・ドライバーの柳川直之選手

一方、コ・ドライバーの柳川選手はこう振り返った。

「今回も本当にあっという間に終わったんですけど、ラリー期間を通して感じたのは鎌田選手が本当にマシンを丁寧に扱っているということ。それが6日間ずっと変わらない印象でした。だからミスによる故障はないだろうと思って乗っていられましたし、安心して指示を出せました」

「初対面でしたが、リエゾンで100km、200kmと移動する間にずっと他愛もない話をして、なるべく会話の数を増やしてコミュニケーションを取っていきました。今はもう完璧にコミュニケーションが取れる状態なのですが、すでに大会が終わってしまったのでちょっと悔しいですね。来年もテインさんが呼んでくれるなら、ぜひまた乗りたいと思っています。鎌田さんと一緒に一番上からのいい景色を見てみたいですね」

◆藤本吉郎総監督が感じたAXCRのアドベンチャー性

チームテインの総監督であるサファリラリーウイナーでもある藤本吉郎氏(右)とチーム三菱ラリーアートの総監督でありパリダカウイナーである増岡浩氏(左)。なかなか見られないレジェンドドライバーの共演

最後に藤本総監督はアジアクロスカントリーラリーについてこう語った。

「すごくいいイベントでしたね。パリダカもそうなのでしょうが、4輪とオートバイが一緒に走るラリーは珍しいですよね。私が現役だったころのサファリもそうでしたが、雨が降る前は何もないのに、雨が降ると川が現れる。それでもサファリにはレッキもあればペースノートもある。アジアクロスカントリーラリーにはそれすらないというアドベンチャー性がプラスされています。なかなか厳しさのあるラリーだと思います」

「実際に見る前はちょっと乗りたいかなと思っていましたし、気持ち的には今でもドライバーとしてチャレンジしてみたい。でもやっぱり身体がついていかないかなとも思います」

◆メディアカーで1500km走って分かった4×4 DAMPER SPORTの実力

取材車のハイラックスと筆者(左)と古野淳氏(右)

通常、アジアクロスカントリーラリーの取材では主催者が用意した現地ドライバー運転のメディアカーに乗って移動する。しかし今回は取材の自由度を高めるため、チームが用意したハイラックスを使って自走で移動した。

ドライバーは筆者、コ・ドライバーは藤本氏と旧知の仲で、WRCにドライバーとしてもコ・ドライバーとしても出場経験を持つ古野淳氏が務めてくれた。

このメディアカーのハイラックスにもテインのダンパー「4×4 DAMPER SPORT」が組み込まれていた。タイヤはテスト時に使用したダンロップ・グラントレックのMTタイヤだ。

直進安定性は舗装路、ダートともに高く、舗装路のコーナリングでもダンパーがしっかりと車体の動きを抑えて安定した走りを見せる。車高は約1.5インチ、約40mmアップしているが、それによる不安感はまったくなかった。

おそらくノーマルダンパーのまま今回のMTタイヤを履いていたなら、ダンパーの減衰力不足を感じる場面も多かったことだろう。

競技終了後のゴール地点からバンコクまでの移動を含め、筆者は約1500kmをこのハイラックスで走行した。それでも長距離を快適かつ安全に走ることができた。

「4×4 DAMPER SPORT」はテインの4×4シリーズでも比較的リーズナブルなモデルだというが、その実力は十分以上。世界各地で人気を集めているという話にも納得できる性能だった。

ほぼノーマルのハイラックスで総合4位! テイン「4×4 DAMPER GRAVEL4」がAXCR初挑戦で快走

《諸星陽一》

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